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初のきっかけは、『ウルトラマンメビウス』だった。特撮好きを見込まれて依頼を受けた朱川湊人は、『ウルトラマンメビウス』で3本の脚本を書いている。そのうちの2本を小中和哉監督が担当。これを機に小中監督は朱川の小説を読み、幻想的なものを通して人間の心の奥深い部分を描く作風に大いに共感を覚える。中でも心を揺さぶられたのが、『赤々煉恋』の一篇『アタシの、いちばん、ほしいもの』だった。

幽霊になってしまった少女を通して生きることの大切さを問い直すというアイディアは、小中監督の『四月怪談』と共通している。同じテーマをより現代的に、より痛切に表現できる題材だと考え、小中監督は映画化を決意。

 

中監督が山野井彩心と共同で書き上げた脚本を持って映画化を画策し始めた時、プロデューサーの名乗りを上げたのは、関顕嗣。関は小中監督のデビュー作『星空のむこうの国』では出演、続く『四月怪談』では共同脚本を担当し、映画界に進出。現在はアイエス・フィールドでプロデューサーを務めている。関と小中はバップに企画を持ち込み、プロジェクトがスタートした。

 

note_img01影は3月20日にクランクイン。主演の土屋太鳳は手作りクッキーを焼いてきてスタッフに配る。その心遣いにスタッフは感激。

例年よりも早い桜の開花となり、ほぼ満開の桜の風景が随所で登場することになった。

午後はりんごちゃんと樹里が出会う公園のシーン。りんごちゃんのお母さん役の有森也実と小中監督は『星空のむこうの国』以来、現場を共にするのは実に28年ぶり。

有森が芝居でりんごちゃん(西野瑠菜)を叱りつけると、本当に怒られたと思って泣き出してしまう一幕もあったが、順調に撮影は進行。

 

note_img02男はCGI処理されるため、現場では何もない状態で芝居をしないといけない。少しでもイメージできるように、虫男の実物大の切り抜き人形を作成し、助監督がテストの間は持って動いてみせる。撮影にはCGIモーション監督の板野一郎も立ち合って確認。

 

男のデザインも板野一郎。声を演じる大杉漣の顔を意識してデザインした。板野の監修の下でアニメーションとコンポジットを日本エフェクトセンターのクルーが担当。特殊視覚効果全般を小中組常連の泉谷修が手掛け、虫男シーンの視覚デザインでマット・アーティストの木村俊幸が参加した。

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note_img033月21日、荒川の土手で夕景の下校シーンの撮影。楽しげに笑い合って話をして、という監督の注文に、土屋、清水、吉沢の三人はアドリブで次々とバカ話を連発。笑いの絶えない現場だった。

 

note_img043月22日、24日は聖学院高校での撮影。同校は関プロデューサーの母校。エキストラで現役の高校生も参加してくれた。授業シーンで先生役で出演したのは、関プロデューサーの高校時代の担任教師だった宮崎先生。いつも通りの授業をリアルに演じていただいた。

 

note_img05影監督の藍河兼一は小中組初参加。被写界深度が浅いデジタル一眼レフのカメラを自らフォーカスを送りながら自在に使いこなす藍河に小中監督が惚れ込み、起用された。本作はほぼ全てのカットが手持ち撮影。通常は撮影助手がフォーカスを送るため、事前にメジャーで計測する必要があるが、今回は役者に自由に動いてもらい、藍河がそれに応じて臨機応変に手持ちで追いかけていくスタイルが採用された。

 

3月30日、田町の読売理工福祉専門学校で自殺者遺族の分かち合いの会のシーンの撮影。土屋のほか、母親役の秋本奈緒美やこのシーンにワンポイント出演の堀内正美、石田信之らが顔を揃える。世話人役の堀内は、実際に様々な社会的活動を実践している。堀内は監修のNPO法人グリーフケア・サポートプラザの加藤勇三理事長から実際の分かち合いの会の進行の様子を熱心に聞き、演技に反映させた。

 

3月31日、街の様々な場所を歩く樹里の撮影。都会を流れる渋谷川のコンクリートの基底部やレインボーブリッジの巨大な支柱の下など、普段あまり行くことのない変わった場所でロケ。樹里以外の人や車が猛スピードで動くカットを撮るため、土屋は長い間同じポーズを取り続けなけれればならなかった。この日で実景を残して芝居部分の撮影は終了。